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財政的にやっとこ余裕が出来たんで、某手芸店へ行きました。獲物は某海外メーカーのクロスステッチキット、ミュシャの「ビザンチンヘッド(ブルネット)」です。
さくっと売り切れてやがりました。
そんな。先週はまだあったのに。高いから思い切るのに半年以上掛けたのに。しかも輸入品だから次回入荷は未定なのに。つかネットで調べてもどこも在庫ナシってあああああああああああ。
また狩りそこねちゃったよう…いいんだ作り切れるかわかんないし…ミュシャ…………。
で、そんな傷心を抱えつつ、再読したのが本日の一冊。
エリゼ宮の食卓 (新潮文庫刊/西川 恵)
サブタイトル「その饗宴と美食外交」。美食外交ですよ奥さん。エリゼ宮は言わずと知れたフランス共和国大統領官邸、ここで供される饗宴に込められたメッセージと現代のフランス外交姿勢を読み解いていく、という一冊です。
いやまったく、55分という凝縮された時間の中に(この時間を決めたのはド・ゴールらしいそう。あー有り得るわー)、本当にフランスの意地と誇りが凝縮されているんだな、と。私は鉄板下戸なせいもあってワインの格付けなんてぜんっぜん知りませんし、薀蓄を聞いたり読んだりするたびに「飲んで美味しくてメシに合ってればいんじゃね?」などと思ってしまうのですが(これは食い物全般について、ですな…)、ワインを単なる添え物の飲料ではなく食材としての一要素と考えると納得が行く、気がします。だったら来賓の重要度とか将来性とか機嫌損ねたらやヴぁい度とかで、気合の入り具合が変わるのは当然だ。だって好きな人には美味しく食べてもらいたいし、気になる人には俺はちょっと出来るんだぜってのを見せたいじゃん。
通読してみて思ったのは、とても鋭敏なバランス感覚の上で構築された饗宴の数々も、結局は上記のようなごくシンプルな感情が動機になっているんだな、ということです。勿論、この感情は国家間レベル=国益に直結しますから、迂闊な真似は出来ないんですが、逆に言うとあそことかあそこの国に対してさえ、あの伝説の京都ぶぶ漬け攻撃をもワインに託して出来るということ。55分間のナイフとフォークとワイングラスの外交、洗練の極致である一方で非常にプリミティブな感情の発露の場でもある。この辺りを読み解く過程がとても面白かったです。また例に挙げられているのがフランスと特に関係の深い(T山さん曰く「トムジェリ」の)英国や(T山さん曰く「まだトムジェリって言うには仁義無き関係かしらね」な)ドイツ、中国、ロシア、アメリカ、日本、ラトビア(たまたま取材時に国賓がいらしていたそうで)というラインナップで、こうして当時の情勢と照らし合わせた上で各国間の待遇を比較されると、とても(いろいろな意味で)興味深いです。(そーいえば申誇示(仮)さん、アルコールをあまり嗜まない人だそうで…どーなっちゃうんだろ。)
また、薀蓄本としてもすごく楽しい。実際の饗宴、ことに国賓の接待のプロトコルを順を追って解説してくれるんですが、なんつったって国の威信が懸かっている以上、ある種の芸術の域にまで達しています。テーブルクロスの裾から床までの長さをミリ単位で計測とか銀器やテーブルクロスの管理は文化省の出張職員とか、つか国宝に料理盛って宴会に出すなんて有り得ねえ。国宝のテーブルクロスて…染み落ちなかったらどーすんのよ!芸術大国の心意気を見たね!
食べ物薀蓄と外交解説、フランスの文化に対する姿勢の解説書、と、一冊で何度も美味しい本です。うー何度読んでも楽しいわ。食べるのが好きな方、また某所の仏兄ちゃんを愛する方には是非ご一読をお勧めしたいです。
と、ここまで書き終わるまでのBGMは日本秘密結社(仮)すぺさる「映像の世紀」サントラでした。「パリは燃えているか」は何度聴いても泣ける。DVD-BOX欲しいよう…。