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今日何を読んだ、面白かったレベルの読書感想文メイン雑記
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河出書房新社刊。

夏に続き、冬の埋め立て地も1日目はどうやったって不参加と相成りました。つか、休みが今年から30日始まりって聞いてねえ。この冬の狩場はときゅとおお振りと小説FCと歴史と文芸とオリジナル。半分は諦めねばならんのか…。納会は何としても逃げ了せてくれるわ。


さて書くと予告してやっと書けますこの本の感想。書評の感想って難しい。割と集中して考えた、と思う。Hろやんさま、俺はやったぜ。(私信)
新聞連載時から単行本化を待っていました。いやー纏めて読みたかったのよ。連載時の津野裕子氏のカットが収録されていないのがちょっと残念、しかしそれを差し引いても、凝った装幀は古き良き図書室を思わせる可愛らしさです。
この「それいゆ」で紹介されそうな(今ならゴスロリ誌に載っちゃうんだろうか。ある方面では対極だと思うんだが)装幀を取っ掛かりに、「志は高く心は狭い文科系小娘のための」本が紹介されています。だからといって吉屋信子や森茉莉、佐々木丸美等々のみが延々と出て来る訳ではない。足場を固めた上での選択は時にハードかつドライ、まさに少女のように潔癖な視点が貫かれ、私のようなヌルい読み手は圧倒されるばかりです。にしても、必須と評されつつも未読の本の多いこと。この世の本棚はなんて大きいったらないんだろう。
でありながら、読み進めるうちに言い知れぬ恥ずかしさを覚えるのは、てめえのイタい行状の数々がざかざかと掘り返されるから。ああそうだよ、このくそ厚かましく自意識ばかりが肥大した周りはみんなバカばっかしという根拠の無い優越と表裏一体のコンプレックスは佃煮にする程身に覚えがあるよ畜生。俺のものにならないなら殺すもあなたは私の血と肉になるのも透明な絶望も二人だけの世界も汚れた大人も慣れ親しんだ世界さ先生怒らないからはい顔を伏せて手を挙げてー。
…これこそが少女、かも知れません(今ならイタい同人か)(天に唾ー…)。ともすれば薄暗がりの甘い部屋へと逃れがちな選書でありながら、千野氏の視点が明らかに一線を画すのは、自分で選ぶこと、そして選ぶという行為に優越も卑屈も抱くことなく自らを律すること、を強く主張しているが故ではないかと。その結果を「本に選ばれる」という言葉に集約しているように私には読めました。他者と折り合いをつけるのが苦手な私(女子と一般化して論じるのは、それこそ千野氏の主張の読み違えだろう)にとって盾にも武器にもなり得る文章の数々。だがそれに頼りきり、溺れてはならない。何故なら主体は常に私であり、盾と武器を必要とする私の中の少女が、盾や武器を本来の本として扱い、一人で世界に対するように成長させ得るのは私しかいないのですから。そう、大人は解ってくれないからって盗んだバイクを乗り回したらそれは窃盗だ。いい年して何青いこと書いているのかっていいじゃん太古の昔は処女と書いてをとめだったんだから!どうでもいいんですが紹介されている吉屋信子の「屋根裏の二處女」に、秋津さんという登場人物が出てきて思わず斜めった。無論好きな作家ではあるんだがいきなりこーなんつーか
ただ、ちょっとした罠も張ってあるように感じます。この本で紹介される図書を全て読むことに「特別である自分」を認め、優越を覚えるというありがちな落とし穴です。「自らの意思で」紹介された全ての、もしくは合いそうな本を選び読み、更に本棚を拡げていく。ここに他者の介在する余地と、たかがこの程度のことで優越に浸るほどのヌルさは、誇り高き小娘には存在し得ない筈。この本が案内人であると同時に単なる道具であり、また時に批評と批判の対象であるという認識をしっかりと持たないと、少々危険やも知れぬ、とも思います。
具体的な選書の数々は先に書きましたが、文学少女の必須教養からおじさんたちの裏名著に至るまで実に幅広い。犀星の「蜜のあはれ」が出てくる辺りがなんとも(わたしゃこれエロ小説に分類してたんだが)。千野氏は現在、新聞にて続編「文藝ガーリッシュ お嬢さんの第二の本棚」を連載中ですが、今度は翻訳洋書の率が高くなっています。この本では和書ばかりですから、リターンマッチというところでしょうか。早く単行本化してくれ、まとめて通読したい。
もし本好きを自認するならば現役退役脳内乙女は勿論のこと、殿方(少年とは言わん)にも、この書評集をお勧めしたいです。過去に学校の課題図書のラインナップに遣り切れなさを感じた経験のある方ならば、なおさら。

ところで56頁、韋駄天お正へのツッコミは拳を床にがすがす打ち付けて激しく同意。非常に秀逸かつ卓見、ここだけでも必読。
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